Yu Seki & Yohji Igarashi
L I V E
Yu Seki & Yohji Igarashi
1st ONE-MAN
SCHEDULE
10.23(金) - 10.24(土)
大阪
GORILLA HALL OSAKA
10.23 OPEN 18:00 / START 19:00 10.24 OPEN 17:00 / START 18:00
YUMEBANCHI (OSAKA) 06-6341-3525www.yumebanchi.jp
10.28(水) - 10.29(木)
東京
Zepp Shinjuku(TOKYO)
10.28 OPEN 18:00 / START 19:00 10.29 OPEN 18:00 / START 19:00
HOT STUFF PROMOTION 050-5211-6077www.red-hot.ne.jp
TICKET
チケット料金
スタンディング
¥8,800(税込)
※入場時別途ドリンク代必要
注意事項
- ※お一人様4枚までお申込みいただけます。
- ※各公演にそれぞれ1回ずつエントリー可となります。
- ※同一公演への複数エントリーはできません。
- ※本公演のチケットは全て電子チケット(スマートフォン限定/アプリダウンロード必要)となります。
- ※整理番号付きとなります。
- ※未就学児入場不可。小学生以上はチケットが必要。
- ※転売チケットでの入場はできません。
チケット受付スケジュール
「CLUB GNU」会員
最速受付(抽選制)
受付期間
6月29日(月)18:00~7月8日(水)23:59
抽選結果確認/入金期間
7月16日(木)15:00~7月20日(月祝)23:00
※1会員様につき、1公演4枚(申込者様分+同行者様3名様分)までお申込みいただけます。
※当先行受付でお申込みの場合、同行者様は必ずしも「CLUB GNU」会員である必要はございません。
※CLUB GNUチケット最速先行受付期間中に「CLUB GNU」へのご入会(入金が完了した)後、即時お申込みいただけます。
※コンビニ・銀行振込(12ヵ月・6カ月・3ヵ月)をお選びいただいた場合、ご入金から「CLUB GNU」会員登録完了までに最大1日程度かかる場合がございます。「CLUB GNU」から送信される入金確認のご連絡メールを受信後、チケット受付にお申込みいただけます。
※お申込みにはローソンWEB会員登録(無料)が必要です。
※氏名、その他個人情報等、お申込み時にご入力いただいた内容と、「CLUB GNU」にご登録いただいているプロフィール情報が一致しない場合、落選対象となります。ファンクラブのプロフィール情報は「CLUB GNU」サイトのマイページよりご確認いただけますので、最新情報に更新・統一をお願いいたします。
S P E C I A L
OFFICIAL
INTERVIEW
-
「BAMBOO」ライブ映像
「はじめまして」の現場で感じた化学反応
お二人が最初に出会ったのは、共にサポートとして参加した2020年の踊Foot Works(現・ODD Foot Works)の現場だったそうですね。どういうきっかけで参加することに?
勢喜遊:さとる(井口理)の実家の田植えを手伝うっていう、ものすごいプライベートな予定があって。そこにたまたまPecoriがいて、バスかなんかで一緒に帰ってきたんですけど、その時に仲良くなって、という感じです。
自分のバンド以外でステージに立つのは珍しかったのでは?
勢喜:まあそうですね、King Gnuが始まってからはあんまりなかったかな。
Yohji Igarashi:2019年の終わりに、ODDの方でDJというかマニピュレーター的なことをやっていた人が抜けるということで、僕はそこからジョインすることになって。ODDとはその2、3年前に出会って、アルバムのティーザーの音源編集を手伝ったりもしてたんですけど、当時はそこまで深く関わっていたわけでもなくて。それで2020年にサポートするようになって……2回目の現場だったかな。遊くんが参加すると聞いて、「はじめまして」みたいな感じだったと思います。
それで一緒にやってみて、お互いの第一印象はどうでしたか?
Yohji:自分とは格が違うというか(笑)。当時からバンドも売れていたし、「すげえな」「うまいな」と思っていました。あとは柔軟さも印象的でしたね。僕はそこまでバンドにジョインしてきた経験があるわけではないので、もっと音源どおりにやるものだと考えていたんです。でも、ライヴで(ドラムの演奏が)アレンジされていて、「こういうのアリなんだ、めっちゃいいな」と思いました。
持ち前の即興性にも驚かされたと。勢喜さんは?
勢喜:面白い人だなって。Yohjiの活動とかについては、正直未だによくわかってないし(笑)。
でも、なんか気が合うなと。
勢喜:そう、いいなって。
Yohji:このプロジェクトをやっていくうえで、ホスピタリティ的なところが意外と大きいかもしれないです。純粋に音楽をやるためだけのピースというよりも、気兼ねなく一緒に時間を過ごせる人みたいな。だから一緒にできるんだなって。
Yu Seki & Yohji Igarashi「SUPERMARKET」Live from ONENESS
ドラムとトラック、二人のビジョンが重なった瞬間
次の接点は、2023年12月に公開されたCONVERSE × WACKO MARIAのブランドムービーですよね。勢喜さんがドラムを担当し、Yohjiさんがトラックを制作。Yu Seki & Yohji Igarashiの原型ともなった曲ですよね。勢喜さんはこの動画のコメント欄で、「ODD FOOT WORKSのサポートで知り合って以来、ずっと一緒にやってみたかった」と綴っています。
勢喜:僕自身に、King Gnuとはまた別の形で、ソロみたいな形で何かやってみたいなという思いがあって。ダンス・ミュージックというフォーマットで何かやれたらな、というヴィジョンが昔からあったんです。「自分は純粋にバンドマンっていうタイプでもないな」とも思っていたし、もともと(小学5年生くらいから)ダンスをやっていたので。そんなにクラブに行くタイプでもないですけど、漠然とそんなふうに考えていました。
広義のダンス・ミュージックを、自分がドラムを叩く形でいつかやってみたかった。その想いを実現させるうえで、Yohjiさんと一緒にやるのがいいんじゃないかと思った、と。
勢喜:そうです。
Yohji:めっちゃ嬉しかったですね。他にも作れる人なんて周りにいそうなのに「俺なんだ」って。僕は逆に、ずっとダンス・ミュージックを軸にいろいろな人の曲を作ったり、DJをやったりする中で……ダンス・ミュージックってある種、すごい無機質じゃないですか。もっと有機的なものと融合してみたかったし、その当時(2023年頃)はライヴのことまで考えていたわけではないけど、そういう表現をずっとやってみたかったんですよね。日本のクラブシーンの裾野を広げるためにも。
というと?
Yohji:自分でやっていても思うけど、DJを60分間ずっと聴き続けるのって、一般的なリスナーには少しハードルが高い部分もあるのかなって。クラブに来ても、どこに目を向ければいいのかわからないというか。そこで一緒にライヴできれば、そうした空間でも視覚的な要素を交えながら、60分間ダンス・ミュージックを届けられるんじゃないかと思ったんです。
お互い、この時点でかなりの可能性を感じていたと。実際の作業はどうでした?
Yohji:先に遊くんが叩いているドラムのパラデータがあって、そこに肉付けしていくような感じでした。0から1を作るというよりは、すでにあるものに対してベースラインを付けたりする作業が面白くて。
なるほど。この動画の曲は「WACKO MARIA」というタイトルで、Yu Seki & Yohji Igarashiのライヴでも披露されてますし、King Gnuのライヴでも叩いてきましたよね。
勢喜:そうですね。
そこまで定着しているだけあり、ドラムのビートが相当キャッチーだなと。短い尺でも耳に残る。どんなふうに叩こうと考えて、あのビートが出てきたんですか?
勢喜:どうだったかなぁ……「デデデデデデンデデン」ってやつですよね。小太鼓みたいなスネアがあって、それをうまく使ってみたかったというのが最初にあった気がします。
スコーンと、いい音が鳴ってますね。
Yohji:展開とかは変えてないですね。ドラムの中で起承転結みたいなものができていて、それを踏まえて後半もっとわかりやすく盛り上げるとか、そういう作業だった気がします。
まさにおっしゃる通りで、勢喜さんはドラムフレーズを組み立てるセンスが抜群に素晴らしいと思うんです。テクニカルに叩く技術とはまた別の才能というか。トラックを作る立場から見て、そのあたりの構成力はどのように映っていますか?
Yohji:それはすごく思いますね。(DAWで作業していると)どうしてもミニマルにしがちというか、ドラムで可変性が多いことってあんまりないじゃないですか。それに対して、有機的なうねりがあるというか。ドラムをどう組み立てるか、そのグルーヴをどうスイングさせるかみたいな感覚だったり、音の抜き方ひとつ取っても発想が全然違う。自分の場合は、音を縦方向に積み重ねていく感覚が基本にあるんですけど、遊くんはまた別の視点で音楽を捉えているので、そこが面白いですね。
勢喜さんはその点について、何か意識していたりするんですか?
勢喜:いやー、特にしてなくて。迷い迷い「こんなのを入れてみたけど大丈夫かな?」というくらいですね。
叩いていたら、自然と出てくるみたいな?
勢喜:はい。
話が逸れますけど、ドラムの構成力といえば、新井和輝さんと一緒に参加したCA7RIEL & Paco Amorosoの「THE FIRST TAKE」での演奏も素晴らしかったです。原曲(「BABY GANGSTA」)のドラムンベースとはまた違ったニュアンスが加えられていて。思いつくのは大変だったのでは?
勢喜:いや、まったく大変じゃなかったです。「これしかねえだろ」っていう、パッと出てきたビートがあれで。それをやったらOKみたいな。
毎回ひらめきが凄い(笑)。「WACKO MARIA」に話を戻すと、勢喜さんが表紙を飾った『リズム&ドラム・マガジン 2024年4月号』のインタビューで、「今までKing Gnuの作業しかやったことがなかったので、外部のトラックメイカーがどういうワークフローなのか、ステム・データで見れたので、めちゃくちゃおもしろかったです。参考になりましたね」と話していたのも気になりました。
勢喜:たとえば、「クリック」というトラックがあって。本当に「カカカカ」とだけ鳴っているみたいな。King Gnuではそういう作り方をしてこなかったので、全然違うんだなと思いました。
Yohji:そこはクラブ・ミュージック特有の作り方かもしれないですね。ベースやドラム(低音域)を際立たせたいと思った時に、それ以外の要素はできるだけ削ぎ落としたい。でもそうすると、中高音域がスカスカになってしまう。だから、その帯域を埋めるために「カカカカ」と鳴るクリック音や、「ササササ」というノイズを入れたりする。そうすることで空間を埋めつつ、ドラムやベースを大きく聴かせることができるんです。でも、ロックバンドの構成であれば、そこの音域にはボーカルが入るので、そもそも別の音で埋める必要がない。たしかに、発想としては全然違いますよね。
勢喜さんがKing Gnuの『THE GREATEST UNKNOWN』(2023年11月リリース)を制作していたのは、「WACKO MARIA」と同時期ですか?
勢喜:並行して進めていたと思います。
『THE GREATEST UNKNOWN』の制作で、勢喜さんはDAWの打ち込み作業に集中し、ほとんどドラムを叩いておらず、ドラムを録る時もタム、スネアなどすべてバラ録りだったそうですね。そんなふうに普通のロックドラマーらしからぬスタジオワークに没頭していた時期、Yohjiさんと一緒に作業できたのは大きかった?
勢喜:うん、大きかったと思います。
つまり、あのアルバムの制作では、自分の担当楽器やリズムパートをどう組み立てるか、他のメンバーの演奏や楽曲全体のバランスまで俯瞰しながらアレンジを考える視点が求められたということですよね。単にドラムを上手く叩くというより、トータルの完成度を優先する。そうした姿勢が、そのままYu Seki & Yohji Igarashiとしての活動にもつながっているのかなと思いました。
勢喜:そうですね。もうドラムを上手く叩こうとはあんまり思っていなくて。King Gnuにおいても。それより先の、もっと深いところに行きたいなと思ってます。
Yohjiさんは実際に一緒に作業してみて、どんな可能性を感じましたか?
Yohji:最初の頃は「いかに正確に刻むか」を意識しながら制作していましたが、「そういうことじゃねえな」と思うようになってきて。クオンタイズで揃えるのとは違う、もっと肉体的なダンス・ミュージックをどう成立させるか。あとは、ドラムセットを叩いて出てくるのは、やっぱりアコースティックな音じゃないですか。パソコンのツールやシンセとは音圧が全然違う。その質感をどう馴染ませるか、もしくはどこまで生のドラムを採用して、どこまでを打ち込みにするか、みたいな。その塩梅は今も探っていて、すごく楽しいですね。
勢喜遊はロックとクラブの垣根を越える
そしてついに、Yu Seki & Yohji Igarashiを結成。勢喜さんからYohjiさんへ声をかけたそうですが、それはどのタイミングで?
勢喜:「WACKO MARIA」を作った時に、自分の中で手応えがあったんですよ。「なんかもっとやれそうだな」って。その後、TAMAのイベントに出演して(2024年12月1日「TAMA 50th Anniversary Event」)、そこでは自分で作ったデモを流しながら演奏したんです。その時に作った音源をデモとしてYohjiに渡して、それがPecoriの「Gonzo」という曲になって(2025年7月リリース)。ちょうどその時期にフジロックの出演が決まった、という感じですね。
どんなふうに声をかけたんですか?
勢喜:「やろうよ」って。
Yohji:(笑)。
結成するにあたって、どのようなコンセプトを思い描いていました?
勢喜:まずは、ドラムを生かしたダンス・ミュージック、ドラムンベース、ベース・ミュージック。あとはドラムセットをクラブに持ち込みたいと思ってたんですよ。まだできてないですけど、それが目標ですね。
ドラマーとトラックメーカーが組んでライヴをやること自体は珍しくないですけど、お二人のような音楽性でやっている例は思いつかなくて。現在の編成や音楽性についてロールモデルみたいな存在はいたりしますか?
勢喜:僕はDan Mayoというドラマーが好きで、彼はFred again..の曲にもクレジットが入っていたりして。Anderson .Paakも(Fred again..と)一緒にやってましたよね。あの辺はモロかなと思います。
Dan Mayoのドラム・パフォーマンス動画
Fred again..とAnderson .Paakの共演パフォーマンス動画
Yohji:楽曲単位で「この曲のこういうところを参照したら面白いんじゃないか」という考え方なので、明確なロールモデルはいないですね。ただ目指したいところとしては、日本のクラブ・ミュージック・シーンにおいて、メインアクトを務められるような存在がもっと必要だと思っていて。大きなフェスになると、結局は海外のアーティストがヘッドライナーを担うことが多いですし、日本のアーティストだけでメインアクトを張るのは数的にも限界がある。いわゆる大御所のDJが、ずっと同じ顔ぶれのままという状況も続いていますし。
すごくわかります。
Yohji:だから僕としては、国内からメインアクトを張れる存在を生み出したいという思いが強くある。もちろん、自分自身がそうなりたいという気持ちもありますし、「遊くんがこっちの世界に来てくれたら、相当スターになれるんじゃないか」と思ったんですよね。遊くん自身はそんな下心でやっているわけではないけど、そういう存在になり得るポテンシャルを秘めている。それに、クラブ・ミュージックのシーンって村社会でもあるけど、遊くんのファッションやアティチュードであれば、コミュニティの中に入ってきてもハレーションが起きないと思うんですよ。自然に無理なくフィールすることができる。そういう人はこれまでほとんどいなかった気がするんですよね。
ロックバンドの人間でありながら、佇まいを変えることなくクラブの世界に溶け込めそうなのは、かなり珍しいですよね。あとは、ダンス・ミュージックと聞いて思い浮かべるイメージが、昔の名前で止まっている人も少なくないと思うんです。でも、Yu Seki & Yohji Igarashiは、その感覚をグッとアップデートしている印象があって。先ほどFred again..の名前も挙がりましたが、彼の存在は共通言語として大きかったのでしょうか?
勢喜:大きいですね。ダンス・ミュージックなのに有機的であることもそうだし、バランス感覚も素晴らしい。『USB』みたいなダークでドープな世界観のあるアルバム……まあ、あれはシングルを集めたようなものですけど。その一方で「ten days」みたいなポップな曲もできるし。
Yohji:クラブ・ミュージックを大きく分類する時に、僕はよく「日常型」と「非日常型」という言い方をするんです。「非日常型」というのは、たとえばSkrillexみたいな、ドーパミンがドバドバ系の音楽ですよね。ビルドアップがあって、ドロップで一気に爆発する、みたいな。一方で「日常型」は、アンビエント寄りだったり、チルな方向性で、普段の生活の中でも自然に聴けるもの。その両者のバランス感覚が、Fred again..はとにかく優れている。「日常型」の音楽として成立しているのに、ちゃんとドーパミンが出る。そこがまず凄い。
たしかに。
Yohji:しかも彼の音楽って、単純なクラブ・ミュージックとも少し違うんです。もちろん高揚感を生み出す音楽ではあるけど、それだけじゃなくて、きちんと“音楽的”なんですよね。クラブ・ミュージックの快楽って、文脈を共有していないとわからないところがあると思うんですよ。「あそこからドロップに行くのがヤバい」「音の使い方がすごい」とか、詳しい人なら説明できるけど、そうじゃない人には「低音がすごいね」と言われて終わってしまう。でもFred again..はそうじゃない。クラブ・ミュージックならではのドーパミン的な快楽をしっかり内包しつつ、それをもっと普遍的な音楽体験として成立させている。その絶妙なバランス感覚こそが、最大の魅力だと思います。
ただ気持ちいいだけでなく、きちんと“音楽的”であるというのは、Fred again..のライヴが日本で絶賛された理由でもありますし、お二人がやろうとしていることにも当てはまる気がします。
Yohji:メチャクチャそうですね。
勢喜遊のドラムを形作るハイブリッドな感性、Yohji Igarashiの歩みとアナーキズムを徹底解明【Yu Seki & Yohji Igarashiインタビュー】
野心的なプロジェクトの真相に迫る3部構成のロング・インタビュー。中編となる本稿では、新ユニットへの理解を深めるべく両者の音楽ルーツを深掘りする。即興性に富んだ肉体的なアプローチと電子音を自在に操るハイブリッドなスタイルで、日本を代表するプレイヤーとなった勢喜遊のドラム観。そして、彼とタッグを組むYohji Igarashiの音楽遍歴と、その根底にあるアナーキズムについて尋ねた。
ドラマー・勢喜遊「ハイブリッドな感性」の源流
ここからは現在の活動につながる歩みやルーツ、クラブ・ミュージックへの関心について、お一人ずつ掘り下げていければと思います。まずは勢喜さんから。このYu Seki & Yohji Igarashiというプロジェクトが成立している大前提として、勢喜さんがフィジカルな即興性を備えつつ、デジタル機材も自在に扱えるというのも大きいですよね。その両方をここまで高いレベルで実践できるドラマーは、日本にはほとんどいない気がします。
勢喜遊:ありがとうございます。
もともとはプロドラマーであるお父さんからソウルやラテンのグルーヴを学び、20代前半はジャズ/ファンク系のセッションバーに出入りしたりと、王道的なプレイヤー路線が出発点だったそうですよね。でもある時から電子ドラムやパッドを導入して、今ではそれがトレードマークになっている。
勢喜:まあ、昔から電子ドラムで練習していたし。どっちかっていうと「帰ってきた」という感じも若干あって。たしかに、SPD(サンプリングパッド)は、僕のプレイを語るうえでもだいぶアイコニックなのかなと思いますけど。
パッドを最初に使うようになったきっかけは?
勢喜:常田(大希)に言われたからっていう感じですね。最初はSX-404(サンプラー)を手で叩いていて、そこから弦のチョップを流したりとかもしていたんですけど、「手でやるより(スティックで)叩けるやつの方が良くない?」となって、セットに組み込むようになりました。最初の頃は、僕がそこから同期も全部出していたんですよ。今はマニピュレーターが入っているので、そんな危ないことをする必要はなくなったんですけど(笑)。それも生音だけでは出せないサウンドを操るためで、Srv.Vinciの頃からやってました。
2016年前後の話ですよね。当時、同じようなことをやっていたドラマーは周りにいたんですか?
勢喜:いや、あんまりいなかったと思います。
当時からのそういう蓄積が、現在の活動やスタイルにつながっていますよね。ジャズやファンク、もしくはロックをルーツに持つドラマーの多くが手数の多さを武器にしがちですが、勢喜さんは割と違うスタイルに向かったじゃないですか。
勢喜:僕はニュー・ジャック・スウィングのビート感がすごく好きなんですけど、手数とはまったく別の良さがあると思うんですよね。手数が多いプレイは叩いていて楽しいかもしれないけど、音楽的にはなりづらいというか。それは昔から思っていました。
これは本人から聞いた話で、2023年のフジロックに君島大空 合奏形態が出演したとき、石若駿さんが珍しくSimmonsの電子ドラムパッドを叩いていて。それは勢喜さんから借りたものだったと。
勢喜:あー、ありましたね。
石若さんはそれまで、電子ドラムやパッドを使ったことが全然なかったと言ってました。逆に勢喜さんは、そういう機材を早い段階から導入しつつ、自分のスタイルを確立していくうえで、石若さんの存在を意識することはありましたか?
勢喜:あると思いますよ。そこはもう半分意地ですよね。そっちの領域に行ったら、石若駿っていう絶対的なやつがいるぞっていう。
King Gnuのツアーでは完全電子ドラムに移行したりもしたそうですが、このプロジェクトでは?
勢喜:アコースティックも使っています。ただ、キックは絶対的に電子の方が良くて。音が全然負けないんで。スネアはどっちでもいいかな。スネアとハット、どちらか生であれば。
その時々で変える、みたいな?
勢喜:そうですね。今はスネアが生、ハイハットはエレクトリックの気分です。
Yohji:そこは遊くんのスタジオでずっと試行錯誤していて。最終的に今、バスドラを使ってないよね? 代わりにサンプラーを置いていて。
勢喜:そうそう。
Yohji:フット(足元)にバスドラが存在しないという絵が、メッチャかっこいいなと思っていて。象徴的というか。
日本一のロックバンドのドラマーが、そこまで攻めているなんて最高ですね。King Gnuの「 ):阿修羅:(」も、原曲は打ち込みで超高速テンポなのに、ライヴでは生で叩いているじゃないですか。打ち込みと生演奏の境界を越えるという意味で、Yu Seki & Yohji Igarashiにも直結している話だと思いますが、どうやったら叩けるようになったんですか?
勢喜:不思議ですよね。ライヴで演奏するプレイと、音源で鳴らすプレイは、もうまったくの別物と考えるようになっていて。特に『THE GREATEST UNKNOWN』の楽曲はそう。リハに入って、ドラムセットに座って初めて考える、みたいな。そのくらいのほうが、音源と違う感じになってオモロイなって。完全再現路線よりは、自分ができることに楽曲を寄せるというか。「IKAROS」もライヴでめっちゃ変わったパターンですね。
King Gnu「AIZO」のライブバージョンで、高速ドラムンベースを叩く勢喜遊
ちなみにリスナーとして、現在取り組んでいるようなダンス・ミュージックにハマったきっかけはなんだったんですか?
勢喜:かなり昔の話で、King Gnuになったばかりくらいの頃に、SUPER BUTTER DOGの竹内朋康さんとのセッションライヴで地方へ行ったことがあって。その車の中で聴かせてもらったSteve Aokiの『Kolony』というアルバムがすごく良かったんですよ。それまで全然聴いてこなかった部類の音楽だけど、猛烈に踊れるし、Steve Aokiなりの哲学も伝わってきて。ヒップホップやベース・ミュージックっぽい要素もあって、かなりしっくり来ました。
前編でも触れた『リズム&ドラム・マガジン』のインタビューで、昨年ロンドンに留学する際、クラブにも行ってみたいと話していましたよね。実際に行かれましたか?
勢喜:行きました。特定のアクトを観に行くというよりは、とりあえずクラブに行ってみる感じで。FOLDとかfabricとか。とにかく音がデカいんですよ。そこは日本と全然違う。みんな普通に耳栓を買ってますし。あと、現地のクラブで知り合った人たちに「ここでドラムを叩きたいんだよね」と話すと、みんな「面白そうだね」と言ってくれて。いつかそういう形で、向こうでも演奏できたらいいなと思っています。
ロンドンの有名クラブ・fabricの様子。動画中でDJをしているのはダブステップのパイオニアことSkream & Benga
ちなみにお二人は、日本でクラブに行く時はどのあたりに?
Yohji Igarashi:僕はZEROTOKYOばっかりですね。
勢喜:FORESTLIMITとか、たまに行きますよ。
キャパ90人のディープな小箱に勢喜遊がいる、いい話ですね!
勢喜:何をやってるのか知らずに行って、楽しいなってことが結構多いですね。
Yohji Igarashiの音楽遍歴、その根底にあるアナーキズム
ここからはYohjiさん。もともとDJとして活動を始めたのが……。
Yohji:初めて人前でやったのは18歳なので、2009年かな。超アングラなところですけど。
2013年にmel houseという2人組のユニットを結成して、電波少女などのプロデュースや楽曲提供を手がけてきたと。海外ではちょうどBaauerの「Harlem Shake」が流行っていて、日本でもベース・ミュージックが盛り上がり始めた時期だったと、Qeticのインタビューで語っていました。
Yohji:そうですね。
ベース・ミュージックはYu Seki & Yohji Igarashiの音楽性で大きな割合を占めているように思いますが、そういった音楽を自分が手がけるようになった経緯というのは?
Yohji:僕はもともとヒップホップ育ちで、今はほとんどそういう人もいなくなりましたけど、超原理主義というか。「90年代のヒップホップ以外はダメ」みたいな感じだったんです。「歌メロがついていたらダメ」とか。だから、高校生の頃はJ-POPとか聴いちゃいけないっていう宗派にいて。キングギドラも『空からの力』はOKだけど、『最終兵器』は打ち込みになったからダメ、みたいな。
ゴリゴリだった(笑)。
Yohji:本当はSEEDA、NORIKIYO、SCARSとかも聴きたかったけど、とりあえず渋いものばっかり聴かなきゃいけないみたいな。友達とカラオケに行って、RIP SLYMEの曲でマイクを渡されても何も歌えないですよ。聴いちゃダメな音楽だと思って生きていたので。
勢喜:ハハハハ(笑)。
Yohji:そこから高校を卒業してDJをやり出したら、フレンチ・エレクトロの全盛期だったんですよ。Ed Bangerとか。「かっけえな」って思ってましたけど、そんなこと言っちゃいけないから、レコードで90年代ヒップホップばかりかけてました。
まだ続いてたんですね(笑)。
Yohji:その頃にトラップと出会って……現在のトラップとは文脈が違う音楽で、Baauerの「Harlem Shake」もそうだし、FlosstradamusやDiploもその流れにいましたよね。下ではTR-808のベースが鳴っていて、上モノにはサンプリングが多用されている。その時に、自分の中で「サンプリングならOKじゃん!」となったんです。そこから一気に聴けるようになって。当時のトラップはメチャクチャ大好きで、曲はほとんどSoundCloudでしか聴けなかったんですけど、ほぼ全部聴いたんじゃないかというくらい。タグから検索して毎日聴きまくってましたね。
いい話すぎる!
Yohji:それでトラップが聴けるようになったら、だんだん裾野が広がって。当時のEDMはエレクトロの流れもあって、いわゆるイビサ系というか、サビで派手にシンセを盛るという発想だったんですよね。でも、トラップを通過したことで、ちょうど2012〜13年くらいの時期に「ドロップ」っていう概念が出始めて。Martin Garrixの「Animals」って曲がありますけど、まさにドロップで一気に落とすじゃないですか。あれにマジでビビっちゃって。そこからEDMが大好きになって、内心ずっと聴いてみたかったSkrillexもそこで解禁されたんです。もうヤバイ!となりましたね。
そこから自分でも、EDM的なサウンドを手がけるようになったわけですか。
Yohji:それまではMPC2000XL(サンプラー)でひたすらブーンバップっぽいビートを作ってましたけど、パソコンでの制作を勉強するようになりました。というのも、当時は「EDMを作れるようになったら、あらゆる電子音楽を作れるようになる」と思い込んでいて(笑)。100トラックくらいスタックして、あとはそこから引き算すればテクノにもハウスにもなるし、ヒップホップもビートの打ち方さえ変えればいいって。もちろん今は、それぞれルールがあるとわかってますけどね。
Yohji Igarashiの関連ワークスをまとめたプレイリスト。これまでに様々なアーティストへの楽曲提供/リミックスを行い、自身のソロ作もリリース
Yohji Igarashiがメイン・サウンド・プロデューサーを務める、ラッパーHIYADAMの楽曲「Small World (feat. Elle Teresa)」
そうしたYohjiさんのハイエナジーな音楽遍歴を語るうえで、新しい学校のリーダーズに提供した「Pineapple Kryptonite (Yohji Igarashi Remix)」は欠かせないかなと。彼女たちの海外進出にも大きく貢献したであろうライヴ定番曲ですが、どんな経緯で生まれたのでしょう?
Yohji:あれは当時、88risingの日本支部にいた方から声をかけてもらって。リーダーズと88risingを繋いだのもその方で、日本のアンダーグラウンドな音楽もずっとチェックしていて。僕がプロデュースしているHIYADAMというラッパーの作品も毎回聴いてくれていたみたいで、その流れでオファーをいただきました。ただ、最初に依頼されたのはカラオケ企画用のアレンジ制作でした。「プラスティック・ラブ」や山口百恵の楽曲、KISSのような海外アーティストの楽曲のオケを作り直す役割を担当していたんです。その仕事を5〜6曲ほど進めるなかで「1曲リミックスも作ってほしい」と渡されたのが「Pineapple Kryptonite」でした。最初に作ったのはカラオケ企画の動画用の短いバージョンで、1分にも満たないものだったんですが、担当の方が「すごくいいからフル尺で作ってほしい」と言ってくれて。
実際に完成したリミックス版は、原曲とは構成もサウンドもだいぶ違いますよね。
Yohji:もともとはオリジナルの楽曲構成と同じだったんですよ。そしたら「全然無視してほしい、10分くらいになってもいいから」みたいに言われて(笑)。今もライヴでよく踊ってくれているパートは、動画用の短いバージョンの頃から存在していて。僕も気に入っていたのでそのパートを軸にしながら、ボーカルも削りまくって、思いきりレイヴィーな曲に作り直したんです。最初から反響があったわけではなかったけど、半年くらい経った頃に、知らない友達からも「すごい回ってるよ」みたいな連絡が来るようになって。気づいたらTikTokか何かでバズってました。
Yohjiさんの攻めたトラックメイクは、日本のクラブ・ミュージックにはいなかったタイプのような気がするんですよね。勢喜さんは一緒にやってみてどうですか?
勢喜:これまで俺の周りにいたようなやつって、割とアカデミックであったり、そういうガチガチのところから出てきた人が多くて。そういう中で、Yohjiのトラックはなんだろうな、全然違いますよね。アナーキズムがあるというか。
Yohji:めっちゃありますね(笑)。
「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来
野心的なプロジェクトの真相に迫る3部構成のロング・インタビュー。最終回となる後編では、これまでに発表されたシングル群の制作背景と、10月に控えるワンマンライヴの展望について語ってもらった。彼らのダンス・ミュージックは、オーディエンスが全身で反応し、踊り、汗を流すことで初めて完成される。エネルギッシュで臨場感に満ちたステージを、ぜひとも現場で体感してほしい。
二人のアイデアが交差する制作の裏側
ここからは、Yu Seki & Yohji Igarashiとしての制作背景やライヴ活動について聞かせてください。昨年のフジロックで初ライヴを行った時点で、すでに新曲を15曲も披露していますよね。今回リリースされたばかりの新曲「BAMBOO」もその時点で出来上がっていた?
勢喜:そうですね、フジロックでもやりました。
「一緒にやろう」となってから、制作はどのように進んでいったのでしょう?
勢喜:フジロックに出るのは決まっていたから、自分たちの出番で無音の時間を作らないように、とにかくどうにかしようって気持ちで8ヶ月くらい頑張りました。
Yohji:制作は遊くんのスタジオでやっているんですけど、2024年末頃からずっと同じペースで、週に1〜2回くらい通い続けて。「こういう作品を作ろう」というよりは、「最近こういう感じがいい」「こういうのがやりたい」といったフィーリングを共有しながら、ひたすら話し合いを重ねていって。そうして生まれた曲たちを、あとから(セットリストの)流れが良くなるように並べ替えてまとめていく、みたいな作業でした。
昨年のフジロック出演時の写真
どちらか一方が「こういうのをやろう」と提案するのではなく、二人でアイデアやイメージを出し合う感じ?
Yohji:そうですね。お互いゼロイチで作り始めることもあれば、どちらかが持ってきたアイデアを発展させることもあって。どちらかが何かを出したら、「じゃあ、ここをもう少しこうしてみよう」と手を加えていく感じです。
前編で話に出た「WACKO MARIA」は勢喜さんのドラム・ビートが起点になったそうですが、逆にYohjiさんが先にトラックを作って、そこから発展していくパターンもある?
Yohji:ありますね。
そういう制作のやり取りで、何か印象的なエピソードはあったりしますか?
勢喜:まだ未発表なんですけど、最近できた曲で、お互いが別々にゼロイチで作っていたデモがあったんです。それをそのままガッチャンコしたら、上手くハマったんですよね。
Yohji:二人ともAbleton Liveを使っていて。昔はできなかったんですけど、今はプロジェクトをそのまま持ってこられるんですよ。書き出しをしなくても、自分のプロジェクトに相手のセッションをそのままポンと入れられる。それで、お互いのプロジェクトを重ねて再生してみたら、思いのほかいい感じになったんです。
DAW上でお互いのトラックを縦に重ねた、ということですよね?
Yohji:そうそう。もちろん最終的には少し整えましたけど、かなりいい感じでしたね。
それはヤバすぎて運命を感じますね(笑)。勢喜さんはこのプロジェクトにおいて、トラックメイクにも関与しているんですか?
勢喜:やってると言ってくれる?
Yohji:もちろん(笑)。
勢喜:僕が作ったベースをそのまま使うことは、さすがにあんまりないですけど。でも、「Say Less」の土台は僕が作りました。
デモを先に用意して、それをYohjiさんに投げた?
勢喜:はい。
勢喜遊 & Yohji Igarashi「Say Less」Live from ONENESS
その「Say Less」が昨年7月、最初のシングルとしてリリースされたわけですが、実際に作り始めた順番としてはいつ頃だったんですか?
勢喜:(制作を始めて)ちょっと経ってからですね。一曲目にふさわしいものがなかなかできなくて。その中で「これだったらいけるんじゃないか」と思えた曲で。拾ってきたドラムループを1.5拍単位くらいで細かく刻んで、それを並び替えたら面白いことになるんじゃないか、という発想から作り始めて。ドラムンベースやブレイクコアのすごく基本的な作り方だと思うんですけど、ハイエナジーだしいいかなと思って。
サラッと言いましたけど、自分が叩いたドラムではなく、拾ってきたループから作ったんですね。そういう作り方ってよくされるんですか?
勢喜:全然します。
そういう作り方をしないと思いつかないものがある?
勢喜:というか、めんどくさいんですよね(笑)。マイクを何本も立てて録音するのが。「ライヴでできたらそれでよくない?」と思っているので。
勢喜さんが作ったデモに、Yohjiさんはどんなふうに手を加えていったんですか?
Yohji:パッと聴いた瞬間に「ここをこうして、こうして……」みたいなアイデアが、結構すぐ浮かびましたね。
勢喜:そういう部分を明確に教えてくれるんですよ。僕はたぶん、構成力があまりなくて。ひとつひとつのパートは時間をかけて作り込めるけど、それを曲として組み立てる力がなくて。そこを整理してもらってます。
Yohji:最初のシングルとして「Say Less」に辿り着くまでが難産で、その過程でいろいろ作った結果、曲数が増えていったところもありますね。遊くんは「曲の中で必ずしもドラムを叩いていなくてもいい」という主義ですけど、一発目の作品はリスナーに向けて、ドラムがアグレッシブであった方がいいだろう、というのは意識していました。曲を聴くだけでドラムを叩いている絵が浮かぶのが大事というか。一方で、僕はベース作りを、シグネチャーとまでは言わないけど大事にしていて。遊くんらしいドラムと自分らしいベースを両立させられる曲だし、「これはいけそうだな」と聴いた瞬間に思いましたね。このドラムパターンは、自分だったら絶対に思いつかない。
イントロのスコーンと抜けたスネアの連打で、一気に曲がドライヴするのも見事です。
Yohji:あそこは僕が入れたいと提案して、もともとあのパートはなかったんですよ。ライヴで演奏することも考えたとき、この曲でストレートなビルドアップをやるのは照れくさいから、ブレイクとビルドアップの中間みたいな感じを入れたいなと。めっちゃ遊くんが叩きそうな感じがするじゃないですか。そういうのを入れるのが面白いかなと思って。
勢喜:逆に、ああいうのは俺からは浮かばないですね。
Yohji:自分発信であれをやるのは照れると思うんですよね。僕はある種、再構築する側の視点で見られるので。「遊くんというドラマーがいるなら、最初にこういう見せ場があった方がいいよね」みたいなことを、客観的な立場から考えられるというか。やっぱり二人でやっていると、お互いを客観視できる部分もあって。
勢喜:二人で制作しながらめっちゃ出る言葉が、「これ照れるよね」「恥ずいよね」とか。そこのジャッジは結構あるよね。でも、二人だからこそできることもあると思うし。
Yohji:「さすがにこれはちょっと照れる」みたいな。わかりやすい例で言うと、キャッチーすぎたり。その辺りの絶妙な感覚をすり合わせられるのは、だいぶやりやすいですね。
ロンドンでの出会いが生んだ「BAMBOO」
その次に出た「Tombo」は、グライムやダブステップを基調としていて、「Say Less」のビートとはまるで違うハーフタイム感が印象的です。
勢喜:いろんな曲をたくさん作っているなかで、ハマらなかったビートがあって。でも、モノはいいから、とりあえずDaichiくん(Daichi Yamamoto)に投げてみたら、物凄く上手にメロディを乗っけてくれて。「もうこれでいいじゃん」となったんです。
Yohji:よくあんな感じにしてくれたなって。
勢喜遊 & Yohji Igarashi「Tombo」Live from ONENESS
続く「SUPERMARKET」もベース・ミュージック系で、仮タイトルが「Brostep」(※ハードで歪んだサウンドを特徴としたダブステップのサブジャンル)だったそうですね。Yohjiさんはリリース時「あまり言葉で説明するのも野暮な曲」とコメントしてましたが、あえて説明してもらうと?
Yohji:これは僕がワガママを通させてもらったというか。フジの構成が出来上がったとき、「ここにゴリゴリのダブステップを入れてー、作ってみていい?」みたいなノリで制作したんですよね。こういう曲を作る機会はそうないので。自分のソロとしては派手すぎるし、誰かに提供するにしても、これを提供してほしいっていう人はなかなかいないと思う。
勢喜:ハハハハ(笑)。
Yohji:フジでは最後に「Say Less」をやることが決まっていたので、その前にひとつ波を作りたかったんです。遊くんがハーフタイムで大きくドラムを叩いている光景も、自分の中ではヴィジョンが描けていて。それと実は、まだ発表していない四つ打ちの曲もすでにあるんですけど、それだと現段階では、遊くんらしさや自分たちのアイデンティティが伝わりづらい気もしたんですよね。この曲はインパクトもあるので、早めに発表するのがいいんじゃないかとなりました。
ダブステップを人力で演奏するのは難しそうですけど、勢喜さんのハットやフィルが効果的に機能している印象です。
勢喜:まあでも、ビートのノリとしてはKing Gnuとも遠くはないというか。すでに持っているものとも言えるのかもしれないです。
そして、今回リリースされる新曲「BAMBOO」。この曲もグライムやダブステップ的ですが、「SUPERMARKET」が初期のSkrillex的だとすれば、「BAMBOO」は彼とFred again..がコラボした「Rumble」に通じるものを感じました。
Yohji:この曲はもともと、遊くんから「HANATANIというやつがいて」と紹介されたのがきっかけで。音源を聴かせてもらったら、「この人が友達なの? めっちゃかっこいいじゃん」と思って。それこそ「Rumble」みたいな、音数を削ぎ落としたミニマル・ダブステップを個人的にもやってみたかったんですよね。HANATANIのデモを聴いて、そういうサウンドが好きなんだろうなと伝わってきたので、そこを出発点に作り始めた曲ですね。
この曲にCota Moriさん(森洸大:PERIMETRON)と共に参加しているHANATANIさんは、大阪を拠点に活動するシンガー/ラッパーで、渡英経験で培ったUKグライム調のラップが特徴とのことですが、いったい何者なんですか?
勢喜:僕が去年、ロンドンに3カ月半ほど語学留学していた時期に知り合ったんです。語学学校が一緒だったんですけど、いつも喫煙所にいて。「変わった格好しているな、何者なんだろう」とお互いに思っていたみたいで。それである日、「ヒップホップをやっているので、音源を聴いてください」と声をかけられて。そこから仲良くなって、一緒にドイツへ旅行したりするくらいになったんです。その後、僕が日本に帰ってから連絡が来て、「最近一緒にやっているプロデューサーがいて、トラックがすごくいいので聴いてください」と言うので聴いてみたら、かなりベース・ミュージック寄りのサウンドになっていて。この出会いも面白いし、一回誘ってみようかなと思って声をかけたのが「BAMBOO」になりました。
HANATANI
前編でFred again..の話もしましたが、ダンス・ミュージックからラップ・シーンに至るまで、ここ数年UKが面白いというのは熱心なリスナーであれば知っていることですよね。そういう海外の動向ともシンクロした楽曲のようにも思いました。
Yohji:今の時代にフィットしているというのも、クラブ・ミュージックにおいてすごく重要な要素だと思っていて。トレンドを無視しないことも大事というか。でも一方で、そのトレンドを踏襲するうえで、自分たちの表現としての説得力を持たせられるかどうかも大切だと思うんです。そのリアリティを出せるかどうかが、自分たちの中で「できる/できない」の線引きにも繋がっているというか。この曲のミニマル・ダブステップやUKっぽいノリに関しては、自分たちの中から自然に出てきそうだな、という感覚がありました。
Cota Mori
現場で更新されるプロジェクトの真骨頂
ここまでたっぷり話を伺って、今後の展開がますます楽しみになりました。プロジェクトの展望については、どのように考えていますか?
勢喜:いろいろやってみたいことはありますけど、まずはアルバムを出さないとって感じですね。
ライヴと同様、DJミックス的に曲間を繋ぐのもよさそうですよね。
勢喜:まさに今、そういうこともめっちゃ話し合っています。
東京・大阪のZeppで、初のワンマンも決まりました。
Yohji:ここからどう広がっていくか、ということに興味がありますね。今度のワンマンまでは自分たちの努力次第ですけど、その先の広がり方はいい意味で想像しきれないところでもあって。「この人も聴いてるんだ」「このイベントに呼んでもらえるんだ」とか、自分たちの想定を超えた動きになっていったら面白いなと思っています。
ライヴの現場こそがYu Seki & Yohji Igarashiの真骨頂でもあるのかなと思いますが、そこには現時点でどんな手応えを感じていますか?
勢喜:最近はYouTubeだとMVがあまり回らなくなってきたとか、そういう話もあるじゃないですか。なんかライヴこそ、一番価値が出てくるような気がしていて。そういう意味ではすでに強いプロジェクトだと思うし、ライヴも面白いと思います。
Yohji:すでに発表している曲も、ライヴでやることを前提に作ったものばかりなので。普段、ひとり自宅で音楽を作りながら、AIのクオリティがどんどん上がっていることを実感してますが、やっぱりライヴってそういうので置き換えることができないじゃないですか。そう考えたときに、このプロジェクトをやっていてよかったなと思います。
個人的に、エレクトロニック・ミュージックのライヴにドラムが加わった編成が大好きで、ドラムがビシバシ入ってくる瞬間がすごく気持ちいいんですよね。そこではヴィジュアル面も重要な気がしていて、勢喜さんがドラムを叩くときのフォーム、しなやかなストロークは理想的ですが、そのあたりはご自身でもこだわりがありますか?
勢喜:そうですね。電子ドラムだから「このくらいのテンションで叩いても大きい音が鳴るだろう」というふうには考えないです。ロック上がりだからっていうのもあるのかもしれないけど、聴いたままのテンションで動きたいし。動きとビートの関係みたいなところは、もともとダンスをやっていた手前、意識しているところではあるというか。
いつも踊るようにドラムを叩いてますよね。ダンス・ミュージックを標榜するYu Seki & Yohji Igarashiは、自分が気持ちよくドラムを叩くためのプロジェクトでもある?
勢喜:そうですね、そうだと思います。
文・構成:小熊俊哉
-
■
チケットに関するお問い合わせ
ローソンチケットインフォメーション
https://faq.l-tike.com/ ■ CLUB GNUに関するお問い合わせ
https://clubgnu.com/suppport/
営業時間:平日10:00~18:00(土日・祝日を除く)